東洋のサンモリッツ ニセコ
今回ご紹介するのは、北海道新千歳空港から車で2時間、温泉とスキーが有名で「東洋のサンモリッツ」と例えられるニセコにあるニセコグラン・ひらふスキー場のホテルニセコアルペン。ゲレンデから最も近く、ランチ休憩などでも利便性の高いホテルです。昨シーズン前に免税店登録を済ませ、スキー客に対して免税販売を提供しています。どのように対応されているのかをホテル副支配人の富田渉さんに伺いました。
インバウンド対応のために
ニセコ地区には10年以上前から外国人旅行者が多くいらっしゃるようになり、観光客以外にも長期滞在の外国人が多く訪れるようになっていました。それに合わせて町並みも少しずつ変わってきて、宿泊施設自体も様変わりしてきました。当ホテルは1965年の開業以来変わらずに宿泊サービスを提供し、今はオーストラリアをはじめ特にアジア(中国、韓国、シンガポール)からのお客様が増えてきました。そのインバウンドのお客様以外にもスキー客の昼食休憩などでご利用いただく外国からのお客様も増え、サービス向上のために免税対応を行なうことにしました。
ちょうどJTB系の宿泊施設の会議で免税店化の案内があり、支援してもらえるということだったのでお願いすることにしました。
周辺の免税店
ひらふのスキー場エリアには免税対応をする店舗は今でもあまり多くはなく、当ホテル以外では4か所くらいのようです。スキーをする外国人もさすがにスキーをしている最中はパスポートは持ち歩いていないので、免税販売はスキーをしていないときが多いですね。車で10分くらいの倶知安町では家電量販店や大型ドラッグストアがあるので、車で移動できる方はそちらも利用しているでしょうね。
免税申請の準備は
当ホテルは東急グループなので東京本社で申請するはずだったのですが、実際にはホテルとしての納税地は地元ニセコ(倶知安町)だったので倶知安の税務署での申請でした。
申請については事前にご指導をいただいていたので、準備した書類は税務署にスムーズに受理いただき、滞りなく認可されました。申請には時間がかかると聞いていたので、大変助かりました。
免税販売のためには
免税販売には会計POSを改修する方がよいと聞いていたので、従来使っていたPOS会社に問い合わせて消費税を非課税にする機能を追加してもらいました。会計時に免税する商品について非課税ボタンを押すだけなので売店スタッフにとって使いやすく安心して対応できます。免税の購入記録票も機械化をしたのでスムーズに対応できています。
消耗品用の包装袋や多言語での説明マニュアルについては免税店.jpを利用しています。
このような対応をしているので、売店スタッフは免税販売に対しては面倒には感じていませんね。
免税販売の告知方法は?
宿泊のお客様に対してはまずはチェックイン時に書面を渡して案内します。「パスポートがあれば売店で免税で買える」というものです。部屋の中にも案内をし、ロビーやエレベーター内など館内掲示や売店でものぼりやステッカーなどをたくさん掲示して視覚的に訴えています。
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エレベーター内POP
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チェックイン時書類
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ロビー表示
免税対応は2か所
免税対応しているのはホテル内の売店「アルペンショップ」とスキー場のゴンドラ乗り場前にある「マウンテンセンターショップ」の2店舗。アルペンショップはコンビニ系の食品や土産類、スポーツグッズや東急ハンズ商品などをトータルに販売、マウンテンセンターショップではスキー&スノボグッズを販売しています。ホテル売店は全商品を、マウンテンセンターショップでは一般品に限定して免税対応をしています。
免税は昨シーズン途中の2月から開始をしました。時期的には中途半端なタイミングであったので免税効果で大きく売上げを伸ばすまでには至りませんでした。
ただ、開始当初はどちらの店舗もスキーシーズンのみの免税対応のつもりだったのですが、アルペンショップについてはシーズンオフでも館内需要が見込めるということもあり、通年の対応に変更しました。そんなこともあって免税販売額は順調に向上してきました。
外国人に人気のアイテムは?
ホテルとして免税対応をしているショップでは扱う商品が異なるため、それぞれで売れ筋も異なります。
ホテル売店では食品や雑貨のような一般的なアイテムが人気です。具体的にはTシャツやステッカー、マグネットなどニセコをテーマにして作られている雑貨や日本をイメージさせる和物雑貨、何処のエリアでも外国人に需要の高い馬油を使った商品や化粧品、そして館内で食べるスナック菓子と北海道で鉄板の白い恋人とじゃがポックル。
一方マウンテンセンターはスキーをしている最中に購入するスキーグッズになるので、ゴーグルやウエアなどスキー用品全般が一様に売れています。
免税販売で困ったことは?
通常の街中でのショッピングセンターとは異なる環境でも免税需要があるのですが、そのような環境ならではのお困りごとがあるようです。
「お客様はスキーをしに来ているので、パスポートはホテルのセイフティボックスに保管しているのでしょう。そのようなときにマウンテンセンターで気に入った商品を見つけて、それなりに単価の高いゴーグルなどスキーグッズは免税効果が高いためニーズがあるのですが、パスポート番号だけで免税にできないか?というご希望が出ることがあります。パスポート現物が必要だと説明をして、残念ですがその場での免税はお断りしています。」というのがマウンテンセンタースタッフの方からの声として上がりました。
一方ホテル内売店からは更に多くの声が出てきました。
「まずは免税する消耗品の包装についてです。使用しているビニール袋にマチがないため、商品の袋詰めが大変です。商品を入れた後だと封をするシール箇所がゆがむので密封作業にも手間取ります。」という包装に関する問題。これはビニール袋の改善があれば解決しそうです。
お客様側の免税知識もまだまだ充分ではないようです。「全く免税知識をお持ちではない方も多く、指さしマニュアルをカウンター上に掲示しているものの、一般物品と消耗品の区別方などは理解してもらえない」とか、「チェックインの際に渡している案内用紙を持って来れば免税になると思っていた」と誤解されることもあるそうです。
免税販売の目標は?
免税売上が下がったというような報道もされている昨今ではありますが、スキー場といういわゆる特殊な環境で、主目的がショッピングではない状況でも「訪日旅行者のいるところに消費あり」のようです。免税にするかどうかは販売の延長線上にある話で、ホテルとしては「免税販売を目標にしているわけではなく、免税をフックにした全体的な売上げアップ」を狙っています。
それでも今年の冬は雪が多くてスキー場には大変良い状況であり、お客様も増えているようです。12月単月の免税売上は、昨年2月からの免税売上累計額をなんと150%も上回る絶好調さ。国籍も多種多様で、香港・シンガポール・インドネシア・台湾・カナダ・中国・オーストラリア・マレーシア・タイ・アメリカ・イギリス・ニュージーランド・フィリピン・韓国・ロシア・ドイツの順で売り上げているそうです。告知をしっかりできているからなのでしょう。
販売目標は内緒ですが、免税効果は大きく出ているようですね。
取材を終えて
北海道でも最も人気の高いスキー場のひとつであるニセコひらふは、インバウンド旅行者を集めるようになってもう10年以上が経ちます。当初はオーストラリアからの人気が高かったのですが、今はやはりアジアからの旅行者が増えているばかりか、アメリカやヨーロッパなどからもスキーを楽しみに来る訪日外国人が見られます。取材した日はスキー場がオープンする直前でまだリフトは動いていなかったのですが、スキー板を担いで山を登り滑って降りてくる熱心なスキーヤーも。もちろん海外からのスキーヤーも街中を、スキー板を持って歩いていました。
コメントにもある通り、昨シーズンは2月からのスタートだったのでスキーシーズンのピークを過ぎていたのですが、今シーズンはオープンからの豊富な雪でお客様が多く、免税販売も大きく伸ばしていただいています。館内はいたるところに免税の掲示がされているので外国人スキーヤーにもアピールができています。大都市の大型店舗とは趣の異なる形態でも、ぜひとも大きな成果を上げていただきたいと思います。